脳ドックの意義
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一次予防と二次予防
以前,米国の女優アンジェリーナ ジョリー さんが,両側の異常のない乳房を切除する手術を受けたことにショックを受けらた方も多いのではないかと思います.ジョリー さんは,母親と叔母を乳がんで亡くしています.ジョリーさんには,乳がんと卵巣がんの発症リスクと関連する「BRCA1」という遺伝子の変異があることがわかり,医師から「乳がんになる確率が87%、卵巣がんになる確率が50%」と説明されたことが手術を決意するに至った動機と自らが告白しています.手術の結果,乳がんを発症する確率は5%に減少しました.
このように,病気を早期に発見して治療に導くのではなく,病気になりやすい体質をみつけ,危険因子を排除したり病気ができやすい臓器を切除したりして病気にかかる可能性を可能な限り低くすることを「一次予防」と呼びます.
一方,自治体や企業の支援を受けて行われる成人病検診・がん検診などは,病気にかかっていることを無症状のうちに見つけてよりよい治療結果を得ようとするもので「二次予防」と呼びます.
脳ドックは,破裂するとクモ膜下出血を起こす脳動脈瘤,脳梗塞の原因となる内頸動脈狭窄症や不整脈(心房細動),脳卒中や認知症の危険因子であるメタボリック症候群などを無症状のうちに見つけて積極的に治療に導くことを目的にします.脳動脈瘤や内頸動脈などを無症状のうちに治療するという意味では二次予防に相当しますが,それらの病気が引き起こす脳の病気を,治療により未然に防止するという一次予防の側面も有します.いわば「1.5次予防」とでも呼ぶべきものと考えます.